■□薔薇の封印□■                     (2003.12.13)

 

 
 

ウン年ぶりの宝塚観劇。「モーツァルト!」の小池修一郎氏の作・演出。副題は「バンパイア・レクイエム」。
「ゴシック・ロマン」と銘打たれております。
ストーリーは…主人公フランシスがバンパイアの里に迷い込み、そこの娘と愛し合いバンパイアとなります。
その際、やはりその娘に想いを寄せていた修道僧ミハイルが、「荒ぶる魂」を封じていた十字架を抜き、彼も
バンパイアに。十字架から飛び散った5つの薔薇(宝石)を探し、時空を超えて彼らは生き、対立する…っていう
ストーリー。

こちら、4部構成となっております。
まずプロローグ。現代の僧院の廃墟から。バンパイア伝説のあるそこを「世界文化遺産」にしよう、と人々が集まって…
という展開。「世界遺産」認定のためのデモンストレーションとして、バンパイアのシンポジウムを開くっつうのが少々
アヤしげと云えばアヤしげか。バンパイア研究家なんつうのも出てくるしな。
あ、最大の突っ込みドコロがあったぞ。主人公フランシスが書いたラテン語の日記、というのが発見されているのですが
…待て。書く閑があったのか。今後の展開を考えるとそんな時間は無かったような気が。

さて第1部。
主人公フランシスがバンパイアになる…という場面。
そこで疑問。館の側には修道院があり、修道僧たちがいるわけで。その中には後にバンパイアになるミハイルも居るの
ですが…時代は1300年代。この時代(少なくとも近年まで)は、カソリックの僧はトンスラを剃っていたはずなのです。
トンスラとは、頭のてっぺんを「河童はげ」に剃り上げたもの。映画などでご覧になった方もいらっしゃると思います。
ま、宝塚で「河童はげ」はないか(笑)。ブラックなバンパイアになる修道僧ミハイルの頭にも、勿論トンスラはありません
でした。いや、トンスラがあったら、彼も「不老不死」のイノチを欲しがらなかっただろうによ。違うか。
「荒ぶる魂を鎮める」ための修道院って設定も、なんだか日本的?あまりキリスト教で「あらぶる魂」なんて台詞は
聞かないような。私の勉強不足かもですが。そのキーが十字架っつうのも出来すぎ〜。ついでに十字架を抜いた際に
そこから飛び散った5つの薔薇を探す、というのも「八犬伝」を連想しちゃいましたな。
「修道僧たち」のダンスもなんだかくねくねした謎のダンス。いや、笑えます。何となく。

そして第2部。
場面はルイ14世の宮廷へ。ミハイルはマダム・ノアールという錬金術師に扮し、王弟に接近をはかり国王を倒そうと
するのをフランシスが防ぐ、という話。
まず、女性が男性を演じる男役、それが女装するというのがね〜さぞや演じにくかったろう、と。
マダム・ノアールが黒魔術を行うシーン。「アブラカダブラ」「ビビディ・バビディ・ブー」までは許そう。だが、「エロイム・
エッサイム」と「エコエコアザラク」は無いんじゃないかい〜?

3部は第二次世界大戦下のドイツ。
ユダヤ人亡命の地下組織の顔を持つクラブでの出来事。フランシスはユダヤ人を逃がす側、ミハイルはナチスドイツの
親衛隊にいて…とここでも対立します。
フランシスはユダヤの血を引くダンサーと恋に落ちかけるのですが別れるという悲恋。
そこでつっこみ。親衛隊がクラブになだれこみ、そこの灯りが消され混乱の内に、フランシスは「ここなら大丈夫」と
あるところにダンサーを隠れます。果たして「大丈夫な」隠れ場所とはッ!!!
〜シャンデリアの上なんだよ(笑)。オペラ座みたいにとことん天井が高くない限り、絶対見つかる。間違いなく
見つかる。見つかる可能性倍増地帯だッ!〜案の定、あっさり見つかるんですがね。
その後、フランシスは次の部で突っ込みどころの伏線を張ってくれます(笑)。
ダンサーとその兄、そしてクラブ経営者のダンサー兄弟の異母姉ともう一人。彼等が逃げられるよう「偽造パスポート」を
フランシスは渡します。そこはいい。その後「でもお金が…」という彼等に、フランシスはようやく見つけた「十字架から
飛び散った宝石」の一つ・ダイヤを「金に替えろ」と渡します。はい、ここ伏線(本編でも)。


4部。現代にバック。
フランシスはユネスコの調査員に、ミハイルは製薬会社の社長として現れますが…
そこでミハイルと婚約しかける女性・ジェニファーが、3部でフランシスに命を救われたダンサーの孫にあたるのです。
フランシスはミハイルに捕らわれ、冷凍にされそうになるんですが…その場所を見つけ出したジェニファー、
冷凍カプセルに閉じ込められたフランシスを見て「まあ、なんてこと!」。はい、そこまではよろしい。
が、その後延々と「ばーちゃん」の話を「冷凍されかかってる」フランシスにするんですな。歌付で。
ちゃうやん!今!アンタのやるべきことは「ばーちゃんの昔話」でもなんでもなく!!
カプセルを開く(冷凍を止める)スイッチを見つけること。もしくはカプセルを叩き壊すことやろ〜〜〜!!!
…案の定ミハイルに見つかっちまうのですがね。おばか。
またジェニファーは、祖母がフランシスから「亡命用」にともらったダイヤを加工したコサージュをつけとります。
あの〜それって脱出用に金に替えたやつちゃうのん〜?金に替えてなきゃ、どうやってドイツからイギリスに
渡ったのだ〜!!!
そして2部で「女装の男性」を演じたミハイル役の方、今度はジェニファーを「お姫様だっこ」で退場。
女の細腕で。宝塚も腕力か。

そんなこんな(どんな)でミハイルは封じられ、大団円。
そしてフィナーレになだれ込み。

なぜに十字架つけて、「夜明までも踊りたいの」(マイ・フェア・レディ)にあわせラインダンスか。
いくら退団公演とはいえ、バックに主役の方のニックネームの電飾ちかちかはいかがなものか。
背中にしょう羽根も、主役の方が背負う大きさはハンパじゃありません。あれに花をあしらった日にゃ、「一人
少女漫画」が出来そうだわい。

で、宝塚はアンコールがないのね。すぱっと終ります。
んで、1公演に出演される方の人数の多いことッ!日頃、四季とかで比較的少人数のを見てると圧倒されますよ〜。