■□なにわバタフライ□■           (2005.02.05)  

 

三谷幸喜・作の戸田恵子さんの一人芝居でございます。

ストーリーは、一人の女芸人が「記事にしたい」と取材に来た記者を相手に自分の生涯を語る、というもの。モデルは『ミヤコ蝶々』さん。もちろん、実在の方ですが、展開上ではその名前は出てきません。はっきり名前が出てくるのは『ピンク・レディー』『草刈正雄』『白木みの
る』だけですが〜この方達も展開に関わってくるわけではありません。

席は前から4列目。少々近すぎますが、表情は良く見える。客席は満席。客層も幅広かったですが、思ってたより若い方も多い。
舞台は楽屋風景。緞帳も下りておらず、ライトもついたままなので、開演前からチェック可能。鏡台にソファ、ハンガー掛けに座布団に姿見、差し入れの花。入り口には暖簾。音はナマなんですが〜オケピではなく、舞台装置の2階部分に「音スペース」が。こういう構図は初めてだなあ。

開演前の注意アナウンス。はい、「携帯を切れ」だの「非常口の誘導灯は消えます」だのという例のやつですが〜これは三谷幸喜さんが、方言指導の生瀬勝久さんの指導を受けつつ「大阪弁でいってみよ〜う!」なもの。これがめさめさおかしい。まあ最後に生瀬さんにより、
「…大阪でも場内アナウンスは大抵標準語ですから」なオチがつくんですが。

では内容。まずは…うまい!巧いよ、戸田・マチルダ(笑)・恵子さん!これに尽きるかと。流石に「劇団研修生時代から突出していた」との事だけはある!相手が側に居るような演出もあってます。小道具の遣い方も面白い。

子供時代。家具屋だった父親が芸事に入れ込んだ挙句、娘の手をひいて芸者さんと駆け落ち、その後、当時7歳の娘を座長に劇団を旗揚げというくだり。戸田さん、いきなり着物を脱ぐと、その下は膝丈くらいの着物。帯もちょい、といじって幅広く。そしてお人形の上に膝立ち。ちょうど、お人形の足が戸田さんの脚、という形になるんですね〜これで子供を表現。「舞台に立った」シーンではお人形を頭にくるりとのせて「髪飾り」。
娘時代では、部屋の座布団の真中を結んで、帯の後につけ、娘らしい帯結びを表現。

上記でも判るかと思いますが、最初に「会話」するのが「おとうちゃん」。「小柄な」という表現で表されていくのですが、ストーリーが進行していくにつれ、苦労や年齢でどんどん小ちゃくなっていって…最後にゃ「手乗りおとうちゃん」。おかしい〜(笑)!

初恋の相手だった劇場主の息子の「ぼン」との会話。振られる前はしょーもないネタでも喜んでみせるんですが、別の女と結婚すると判るや否や「あんた、お笑いのセンスないわ!」と一蹴。失恋でヤケになった主人公は漫才の相方だった「にいやん」と家出をするのですが〜ひなびた旅館シーン。いかにも〜などてらを着るのですが…ガムテープでとめるんだよ!びーッてな。

押し倒されシーンもございます。一人だけど!「それはあかんと思う!」と言いつつ押し倒され、脚がだん!だん!と開いていくんですね〜手は「緊張と緩和」を表すと教えられた「ぐー・ぱー」を繰り返し…その後おもむろに「一人じゃやっとれん!」〜確かにね
(笑)。

師匠との不倫も出てきます。はい。師匠。でかいらしいよ。脚なんか電信柱と見紛うばかり、らしいですよ。どんなんや。師匠のために座布団を敷くシーンがあるのですが〜普通座布団×4の、既に座布団やなくて敷布団やろう!なサイズのものをご用意。凄すぎ。師匠の正妻と対決し、師匠と結婚。戦時中のシーンでは床板が防空壕の入り口に、座布団が防空頭巾に変身。戦後になり、舞台構成を考えるシーンでは楽屋口の玉暖簾がスカート代わりになってdancing!

女癖の悪い師匠と別れる時には「師匠の奥さんに云われたわ。『盗ったもんは盗られる』て」な台詞。他にも「繰り返し」台詞やシーンが登場しますが〜つまりはこの人の人生は、ある意味「繰り返し」だったのかな、と。

師匠の元から家出をした時についてきた弟子の「ぼくちゃん」。かつての家出先と同じ「ひなびた温泉旅館」で、ガムテープで止めるどてらを「段々うまなるわ」と云いつつ着用。そこで「ぼくちゃん」による押し倒され状況でも、「にいやん」の時と同じ動き。台詞は「何度もやっとれるかい!」でございましたが〜その「ぼくちゃん」。台詞回しや主人公の動きで「この『ぼくちゃん』って『わんこ』タイプだなあ」と思ってましたら、案の定そうでした。「そんな子犬のような目で見ない!」という台詞が随所に(笑)。

やっぱり「ぼくちゃん」とも別れるのですが〜原因は(予定通り?)「ぼくちゃん」の浮気。子供まで出来ちゃったよう、な展開に「別れる前にあんたの女と会う」というところ。いきなり縫いぐるみをひっつかみ、首にまくとアラ不思議。縫いぐるみの胴体がみょーんと伸びて「狐の襟巻き」!ついでに「わざと少し遅れていくために、そこらでヒマを潰して…」で、実際潰してるのは「ぷちぷち」でした〜。修羅場前のぷちぷち。しまいにゃ肘で潰してたよ。女との談判シーンでは、かつて師匠の正妻が自分に言った台詞をそのまま「自分」が、自分が受け答えた台詞を、そのまま「女」が云っている、という。

ラスト近く。病床にある「ぼくちゃん」を見舞うシーン。姿見の鏡部分を平行より少し斜めにし、そこにカーディガンをかけて「ベッド」。主人公が肩に巻くショールは鏡台のカバー。あれも巧い。

「こういう人生」と語った後、記者に「弱い」といわれたことに対し激昂します、
相手に女が出来ても、争う前に譲ってしまうのは「弱い」のか。
恋愛も芸も「自分からやりたい」ではなく「父に云われたから」「会社に誘われたから」であって、本当にやりたいことをしてきたのか。
主人公は混乱します〜確かにつっこむと堂堂巡りになるんですが。「身をひく」って行為は「強い」「弱い」の両方を含んでますからね。
〜結局、「これからは私のしたい芸をする」と結論。
…実はこれは「記者からインタビューの申し出があったので、自分なりにリハーサルをしていた」ということなんですが。

おしまいのご挨拶。
確かに「出演者」は戸田恵子さんお一人。女芸人一人ですが〜メインにからんだ男性たちも一緒に舞台にいる、という感じでご挨拶です。「おとうちゃん」はライトを空間の下方に当て、戸田さんの紹介の手はかなり下をさします。師匠の時は大きくライトがあたり、戸田さんは手をいっぱいいっぱい上に伸ばして「こちら」ポーズ。「にいやん」「ぼん」「ぼくちゃん」もそれっぽく。ここまで細かくやってくれるとは〜。

アンコールは2回。スタンディングオペレーション。
戸田さんは舞台のあっちこっちから客席にご挨拶をしてましたが、マイクには入っていないもののずっと「ありがとうございました」と仰ってましたね。近いから口の動きが良く見えました。

面白かったのでお勧めしますよう!