2003.09.13)
■□夢から醒めた夢□■

赤川次郎原作の同名の小説のミュージカル。
ストーリーは…主人公の女の子ピコ(元気いっぱい・好奇心いっぱいいっぱい)が、事故死したマコという女の子と、
1日だけ、生者と死者の立場を入れ替えて…っていうストーリー。

さて、ご承知の通り、舞台ってのは開幕のアナウンスがあり、幕が上がって始まるもんですが、この「夢から醒めた夢」は
違います。劇場の入り口でチケットを切ってもらった瞬間から舞台が始まっているのです。
舞台の導入が「遊園地」という設定のため、ロビーや客席に、出演者が開演前から出没。まず高足ピエロがロビーで
愛嬌を振りまいているのですが…ふと見ると仮面の人間がお客さんに混じってたり、手風琴弾きのおじさんがのんびり
歩いてたり。鼓笛隊が通りすぎたと思ったら、ハンドベルを演奏する小人たちや、ちょっと離れた所ではオモチャの兵隊が
タップを踏んでたり、ピエロがシャボン玉吹いてたり、隅ではお客さん参加の輪投げをやってたり。それが「アンサンブル」
参加の方々かと思いきや、メインキャストの方が混じってたりして、なかなか楽しい。
客席に入ると、舞台では曲芸を見せているうち、ロビーの方からハンドベルを鳴らしつつ、「ショータイム!ショータイム!」と
呼ばわりつつ、客席通路を歩いてくる出演者。

そこで、ちょっと嬉しいびっくり。ゆったりしたローブをまとい、仮面をつけた出演者が一人、舞台に上がらず、私の席の
斜め前に座ったんですね。「『CATS』みたい?」と思っているうち、彼にスポットライト。ローブを外した彼は、「夢の配達人」
〜つまり、この舞台の進行役の方。いきなりそこで歌いだしたのでびっくり〜。

舞台もそのまま、遊園地の世界へとなだれこみ。しかし、そのまま楽しい雰囲気は続きません。
第一部の「泣かせ」シーンに突入。
幽霊であるマコが「なぜ自分が死んだのか。どうして1日だけ入れ替わりたいのか」を回想シーンで物語ります。
そこで死んだマコに取りすがる母親のソロ。そこここで、鼻をならす音が。お母さん役の方も上手い。
そのシーン、マコが二人になります。母親が抱えてる(身体だけの)マコと、魂のマコ。おそらく身体の方は人形だと思う
のですが、つい一瞬前まで母親はちゃんと「人間」の方を抱えてたので…その巧みな入れ替わりに感動。
…ちょっと違う(笑)?

実はひっそり楽しみにしていた「霊界の空港」のシーン。こっそりこっそり、私はデビルが気に入っていたのでした。
昨年のTV放映で観て以来、ぜひ!!おネエ言葉のデビルをナマで観たかったんです〜!!
こうして観ると出番がわりと少なめなのですが、インパクトあり。個人的にもっと彼には出張って欲しかったッ!
エンジェルとデビルが空港の管理者という設定なのですが、「キレイな職場でバリバリ仕事」といいつつ、何気に
新任エンジェルにせまってる風なのが楽しい♪

空港で生前犯した罪を償う為に働いてる、3人組(本当は4人なんだけど)が、最後の出まで細かい演技をしていて
チェックしてると面白い。そういえば、3人組の1人「部長」(企業戦士だったが、突然死。生前に家族を省みなかった
罪を負っている)のソロが、まったく別物の歌に替ってました。演出の都合上、歌詞や台詞をいじったり、ってのは
聞きますが、丸ごと替ったのは初めてだなあ。
他の二人のソロも、(内容的には暗いんだけど)明るく楽しませてくれます。
そういや、つっこみ。空港には奥さんがやってくるのを10年以上待ちつづけてるおじいさんがいます。ようやく
奥さんがやってくるんですが…おじいさんが身一つなのに比べ、おばあさんってば荷物多いッ!トランクに風呂敷、
バッグまで。死んでも女は荷物が多いのか。おまけに「皆さんで召し上がってね」って差し入れまで(!)用意済。
一体いつ用意したんだよう!!!

2幕では泣きのシーンがふんだんに。
自殺の罪で働いてた少年メソが、ピコがマコから預かった「天上に上るパスポート」を、出来心で自分のパスポート
とすり替え、そんな彼をピコが庇うシーンとか、やっぱりマコ親子の別れのシーンとか。特に別れのシーン、「一日
だけ」だと納得していたはずの母親が、土壇場でマコを手放せなってしまう所なんかは「泣き」のツボをぐいぐい
ついてきます。
また、シーンは前後しますが…メソはすりかえたパスポートをそのまま使うことを許され、その代わり、
マコにパスポートを再発行することになるのです。再発行にフルネームが必要なのに、ピコは「マコ」という名前しか
判らず、制限時間の3時間以内に探す、というシーン。
大勢でわらわら、該当する「マコ」を探す場面はなかなか楽しい。
「マコ」とつく人物が次々と(笑)。「エスミマキコ」から「チビマルコ」まで何名か有名どころ(?)がメロディーに
のって出てきます。舞台の後にはその名前や特徴が出てきて、出演者がコメントを一言てのがなかなか♪
「ショムニファイナル」もちょっと笑いましたが、似てるんだか似てないんだかビミョーなデビルの「あたしゃ疲れたよ」
は最高。

天上に昇ることが出来た死者は光となる、という事を知ったマコが、「マコ」「メソ」等の空港で出会った人々の名前を
名前を呼びます。するとそれに合わせて光が降りてきて…でおしまい。


これはやっぱりハッピーエンドというのか否かは謎。でも全体に楽しく判りやすく出来てます。
ファミリーミュージカル、ということなので、全年齢対象のせいか。
でもね、私は素直に楽しめました。今回の公演はもう終っちゃうので行けませんが、次の機会があったら
また観たいな。
うん、お勧め♪(って、この感想を読んで「私も行こう」って思う方がいるものだろうか…)